有坂ゆかりの交感する絵画
有坂ゆかりの絵画は、一見すると暗くて茫洋としていてよくわからないという人がいるかもしれない。しかし、暗褐色や黒に塗り込められた画面を時間をかけてよく観察していくと、そこにはこちらに話しかけてくるような親しい雰囲気と、思いがけない深い空間が広がっていることが感じられてくる。 絵画作品を理解する手がかりは二つある。何が描いてあるかというモチーフと、どう表現しているかという技法やスタイルである。しかし、有坂の作品には、何が描いてあるのかという形象がはっきりしているわけでもないし、スタイルという点でも、特にユニークな技法を駆使しているわけでもない。つまり、モチーフと技法から有坂の作品を解読していく…