風のゆくえ
吉岡まさみ 〈予備校時代〉 午前中の3時間は木炭や鉛筆を使ったデッサン。人体や静物を描く。午後の3時間は、やはり人体や静物をモチーフに油絵を制作する。これを月曜日から金曜日の5日間で仕上げる。土曜日は全生徒の作品を並べての講評会が待っている。これが1年間続く。 1976年、わたしは大学受験のための美術予備校「東横美術研究所」に入った。山形から出て来てアパートで独り暮らしをしていた田舎少年にとって、自由が丘という都会の真ん中にあるこの学校では緊張のし通しだった。 ある土曜日の午後、例によって作品の講評会が行われた。でき上がった作品は、イーゼルに載せて並べられるのだが、作品には点数がつけられて、そ…