Steps Gallery

ステップスギャラリー 銀座

取り残される

赤川 浩之 展/2023年10月16日 – 21日

Steps Gallery Criticism by MIYATA Tetsuya

赤川は近年、ステップスギャラリーで動くオブジェを発表している。今回は、紙にアクリル、金属、珈琲、その他を用いた絵画も発表した。他の場所で見たことがあるが、ステップス個展での絵画は、はじめてみた気がする。オブジェに囲まれた絵画を見ると、そこには発見があった。それは、赤川の作品にある既視感である。それが、今回の新しさかどうかは分からない。

古代の壁画に描かれた禽獣のように見える絵画を見てからオブジェに眼を投じると、オブジェのフォルムからその素材の元の形が浮かび上がる。これまではそういったことが気にならなかった。それをアッサンブラージュだとか、ボックスアートに換言する必要はない。赤川独自の構築であると、私は考える。何故ならオブジェは動いているからだ。

または、赤川のオブジェは元の形があってそれらが集積されているという印象を私には与えない。むしろ視線は解体していくのではなく、これが本来の姿ではないかと、未視と既視が入れ替わる。すると私は既に赤川のオブジェをみたことがあるのではなく、目の前にあるのに見たことがなくなる。それでも赤川のオブジェは生き物のように蠢いている。

その有機的な感触は、事物と事象が再び入り混じる。過去にあそこにいた感覚が思い出され、まだ行ったことのない場所に取り残されている想像力を喚起する。想像力は、広さや大きさといったスケール感を喪失して、その瞬間と言う時間軸だけが漂っていく。その取り残された時間軸は既に過ぎたことなのに、まだやってきていないのに、何時までも体に残っている。

(2023年10月21日初見・2024年1月6日記)

03-6228-6195