Steps Gallery

ステップスギャラリー 銀座

おそらく

ナガクボ ケンジ 展/2023年11月20日 – 25日

Steps Gallery Criticism by MIYATA Tetsuya

ナガクボは今回、ジェッソで小さな鼻を幾つも創った。その鼻を米ヒバ材にアクリルの立方体に埋めて着色したり、単体を並べて展示したり、マグネットやピンバッヂにして駄菓子屋で売っているようなセットにしたりした。鼻はカラフルに塗られ、それが鼻だと言われなければ私は分からなかった。鼻が鼻である必要は、ここではなかったのかも知れない。

ナガクボは2014年にもステップスで個展を開催している。その際ナガクボは、小さなモーターを用い、飲料水の蓋を1000個回すインスタレーションを展開した。吉岡はその様子から「ナガクボは時間を問題にしているのではないか」と自問し、ブログで論を構築するという。今回の作品についても、吉岡はナガクボと時間について、ブログで言及している。

「粘土で作ってあるように見えるが、これはジェッソで作ってある。ジェッソというのは、キャンバスや紙に塗って、下地を作る液体である。時間がたつと固まるが、決して粘土のように使って立体物を作るためのものではない。/ナガクボは敢えてこのジェッソを使って鼻を作る。ジェッソを垂らして乾くのを何時間(何日間?)か待ってさらにジェッソを垂らしていく。気の遠くなるような作業だ。あまりにも時間がかかるので、それほど大きな作品は作れない」。 ナガクボが造型しているのではなく、その見えない過程こそが作品であると吉岡は言っているのかも知れない。私もまた、ナガクボの作品とは「いま、ここ」にも「かつて、あそこで」でもなく、「いつか、きっと、おそらく」ある作品だと感じている。その日は、永遠に来ない。

(2023年11月21日初見・2024年1月11日記)

03-6228-6195