Steps Gallery

ステップスギャラリー 銀座

出店久夫のコラージュ

吉岡まさみ

コラージュ作品というのは、雑誌や新聞などの印刷物から写真や文字などを切り取って並べ直して貼りつけたものをそう呼ぶことがほとんどだ。ダダやシュルレアリスムの作家が手掛け、独特の世界を作ったが、それはイメージの思いがけない「出会い」であるディペイズマンと呼ばれる方法や考え方に依拠している。コラージュは「貼る」という意味だが、このことばはシュルレアリスム的な作品に付与されることがほとんどだ。

出店久夫の作品もシュルレアリスムのコラージュに分類されてもよいわけだが、ダダやシュルレアリストの作品と違うのは、出店の使う写真は、印刷物ではなく自身が撮影した写真を使っているという点だろう。印刷物ではなく生写真なのだ。作品に使用される写真は、異様なイメージに溢れているため、印刷物を使っているように思ってしまうのだが、すべて自分で写した光景なのだ。最近では写真というとデジタルカメラを使って撮られたものがほとんどなのだが、出店はフィルムカメラを使い、自分で現像して印画紙に焼き付ける。蛇足になるが、こういうやり方は、途方もなく高くつく。しかし、出店は、自分で撮影して、自分で焼き付けるという方法にこだわっている。しかもカラーではなくモノクロである(部分的に色がついている箇所もあるが、これは手彩色である)。

出店のように、生の写真をコラージュする作家はほとんど見当たらない。デイヴィッド・ホックニーは対象を分割して撮影し、画面の上で貼り合わせ一枚のイメージを作り上げるという作品を作っているが、これは厳密な意味でのコラージュではないだろう。ダダの画家ハンナ・ヘーヒはそのコラージュ作品で有名だが、彼女の作品にも生の写真を使ったものがある。しかし、これは彼女が「自分で」撮影したものではなく「自分を」写した写真なのだ。

さて、出店の作品を見てみよう。写真のモチーフは、象、花、マネキン、少年、踊る人、と脈絡のない画像が同じ平面に並べられて、異様な風景を作り上げている。街の風景の中に散りばめられたイメージは、シュルレアリスム独特の水平線、地平線を遠景に、不気味と言っていいようなちょっと怖いような世界を繰り広げている。さらに彼の作品を特徴づけている技法に、画像の反転がある。一枚の写真を左右反転させて鏡に映ったように見せるのだ。左右の反転だけではなく、上下の反転もできるわけだが、これは写真だからこそできる画面なのだ。同じイメージが繰り返されることで、何が本来あった風景なのかわからなくなってしまい、わたしたちのよって立つ位置をあやふやで不確かなものであることを強調する。この不安定な画面は際限なく増殖していき、世界を埋め尽くしていくように見える。

出店の描く世界は、不気味で異様なのだが、さて、現代のわたしたちが住むこの現実世界と比べてどちらがより不気味に見えるだろうか。

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