Steps Gallery

ステップスギャラリー 銀座

錯覚と妄想

霜田 哲也 展/PASSION OF MANIACS / 1 /2023年7月31日 – 8月5日

Steps Gallery Criticism by MIYATA Tetsuya

霜田哲也は旺盛に活動し、その時々によってスタイルを無尽に変えていくことに魅力がある。何も同じようなことを繰り返すことが、自らの探求とは結び付かない。散漫であると見るのは、見る側の問題である。見る側はむしろ、そういったアーティストの作品に対して、背骨を見つけることを主眼とすべきであろう。その為には、作品と作者を知ることが大切である。

今回、霜田はアメコミ的画風に、英語と日本語で文字が入っている場合もある。それを、ヘッタクソに描いている。それが魅力的である。何かノスタルジーがあるような、ないような。ステップスで個展を続けている、十河雅典を髣髴とさせる。それだけではない。ステップスで活動する様々な作者の残像を見ている気もしてくる。そこに霜田独自の毒を入れている。

霜田は今回、素材にアクリル、水彩、メディウム、ボンド、石膏を使用している。霜田によると石膏の使用は前回の個展の延長だとしているが、前回が立体であったのに対し、今回は平面に用いている。と、ここまで私は書いて、前回が平面で、今回が立体なのではないかと錯覚し、疑った。いや、どちらでもいいのではないか。それは見る側の問題だからである。

霜田はアーティスト名を「霜田」にしているのは、ステップスで発表している霜田誠二への敬意を払ってのことだそうだ。霜田が石膏を使ってパフォーマンスを行っているのか。明確なことは分からない。そのようなことは、どうでもいい。誠二が石膏を用いてパフォーマンスを行っていると錯覚するような哲也の作品を、我々は妄想すればいい。哲也の次作が楽しみだ。

(2023年7月31日初見・2024年1月5日記)

03-6228-6195