有坂 ゆかり 展/野原に眠る/2023年9月6日 – 16日
Steps Gallery Criticism by MIYATA Tetsuya
有坂ゆかりステップスギャラリー初個展である。私もオーナーも有坂のことは以前から知っている。私は有坂の作品から暗黒舞踏を感じていたし、現に有坂もまた暗黒舞踏を見ている。暗黒舞踏の関連がある、では、全く批評になっていない。その両者の奥底に通底するものを明らかにしなければならない。しかし、暗黒舞踏に拘る必要が、何処にあるのであろうか。
吉岡は今回、有坂論を書き上げた。一部を引用する。「有坂ゆかりの絵画は、一見すると暗くて茫洋としていてよくわからないという人がいるかもしれない。しかし、暗褐色や黒に塗り込められた画面を時間をかけてよく観察していくと、そこにはこちらに話しかけてくるような親しい雰囲気と、思いがけない深い空間が広がっていることが感じられてくる。」
吉岡らしい、絵画を見詰める視点がここには込められている。私とすれば、有坂の作品は前回見た時よりも、更に動きが込められているように感じる。それは暗黒舞踏というよりも、映像作品を感じる。映像と言っても、A・ズラウスキーのようなカメラワークやスピード感ではなく、A・タルコフスキーにある、ピクチャレスクな構図というよりも、静謐な感触だ。
ここで動いているか動いて居ないかなど問題にならないという論を展開しようと思っていたのだが、思い出した、タルコフスキーから感化されて作曲したルイジ・ノーノの曲を。その曲こそ、進行しているようで進行しない、過去にも未来にも進まない、ここに留まり続けている感があるのを。その曲のタイトルは、「進むべき道はない、だが、進まなければならない」。
(2023年9月14日初見・2024年1月5日記)